〜相手を変えるより、自分の心を知ることから〜
前回は「思い込みはどうやってできる?」というテーマで、私たちが知らず知らずのうちに身につけてきた考え方についてお話ししました。
今回は、その思い込みとも深く関係する「人間関係のイライラ」について考えてみたいと思います。
皆さんは、こんな経験はありませんか?
「あの人の言い方、どうしてあんなにきついのかしら?」
「私はこんなに気を遣っているのに……」
「どうして私の気持ちを分かってくれないの?」
家族や友人、ご近所の方など、身近な人との関係でイライラした経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
そして、そんなとき、
「こんなことで腹を立てる自分が嫌になる」
と、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、イライラすること自体は、決して悪いことではありません。
イライラは心からのサイン
怒りやイライラは、私たちに備わっている自然な感情です。
例えば、
大切にしていることを否定されたとき。
理不尽なことを言われたとき。
自分の気持ちを無視されたと感じたとき。
そんなときに怒りが生まれるのは、ごく自然なことです。
怒りはときに、
「私は大切にされたい」
「私の気持ちも分かってほしい」
という心の声を知らせてくれることがあります。
ですから、イライラしたときに大切なのは、無理に感情を抑え込むことではなく、
「私は今、何に腹を立てているのだろう?」
と、自分の心に目を向けてみることです。
怒りの奥に別の感情が隠れていることも
心理学では、怒りの背景に悲しみ、不安、寂しさ、傷つきなどの感情がある場合も考えます。
例えば、家族に何かをお願いしたのに、何度言っても協力してもらえなかったとします。
表面には、
「どうして手伝ってくれないの!」
という怒りが出てくるかもしれません。
でも、その奥には、
「私ばかり頑張っていて疲れた」
「少しは気づいてほしい」
「私のことも大切にしてほしい」
という気持ちがあるかもしれません。
怒りだけを見るのではなく、その奥にある自分の本当の気持ちに気づくこと。
それが、心を理解する第一歩になります。
「こうあるべき」という思い込み
人間関係のイライラには、前回お話しした「思い込み」が関係することもあります。
例えば、
「約束は必ず守るべき」
「人には優しく接するべき」
「家族なら助け合うべき」
「年上の人には礼儀正しくするべき」
こうした考え方は、決して悪いものではありません。
むしろ、社会生活を送るうえで大切な価値観でもあります。
ただ、自分が当たり前だと思っていることを、相手も同じように考えているとは限りません。
自分の中の「当たり前」と、相手の「当たり前」が違ったとき、イライラが生まれることがあります。
ここで少し考えてみたいのです。
「私の当たり前は、相手にとっても当たり前なのかしら?」
そう問いかけてみることで、違う見方ができる場合があります。
同じ言葉でも受け取り方は違う
例えば、誰かから、
「そんなことも知らないの?」
と言われたとします。
ある人は、
「教えてもらえばいいわ」
と思うかもしれません。
でも別の人は、
「馬鹿にされた」
「見下された」
と感じるかもしれません。
その違いには、これまでの経験や価値観、そのときの心の状態などが関係していることがあります。
ただし、ここで大切なことがあります。
それは、相手の言葉が本当に失礼だったり、傷つけるものだったりする場合もあるということです。
すべてを自分の受け取り方の問題にする必要はありません。
相手の言動と、自分がどう感じたか。
その両方を大切にして考えていきたいですね。
相手を変えようとすると苦しくなる
「あの人がもっと優しくしてくれたら」
「どうして分かってくれないの?」
「もっとこうしてくれればいいのに」
私たちは、つい相手に変わってほしいと思ってしまいます。
でも、相手の考え方や行動を、自分の思いどおりに変えることはできません。
一方で、自分の気持ちを整理したり、相手への伝え方を工夫したり、関わり方を選んだりすることはできます。
相手を変えることにエネルギーを使い続けるより、
「私はどうしたいのだろう?」
と自分に問いかけてみる。
そこから、新しい選択肢が見えてくることがあります。
イライラしたときに試したい3つのこと
① まずは呼吸を整える
イライラすると、呼吸が浅くなったり、速くなったりすることがあります。
そんなときは、無理のない範囲でゆっくり息を吐いてみましょう。
吸うことよりも、まず吐くことを意識してみます。
数回繰り返すことで、気持ちが落ち着きやすくなる場合があります。
② 自分の本当の気持ちを確かめる
「私は何が嫌だったの?」
「本当はどうしてほしかったの?」
「何を大切にしたかったの?」
と、自分に優しく問いかけてみましょう。
怒りの奥にある悲しみや寂しさ、疲れなどに気づくことがあるかもしれません。
③ 自分の気持ちを穏やかに伝える
相手を責めるのではなく、自分の気持ちを言葉にしてみます。
例えば、
「あなたはいつもひどい言い方をする!」
ではなく、
「その言い方をされると、私は悲しく感じます」
と伝えてみる。
これは、自分を主語にして気持ちを伝える「アイメッセージ」と呼ばれる方法の一つです。
もちろん、相手や状況によっては、直接伝えることが難しい場合もあります。
そのときは、無理に話し合おうとせず、距離を取ることも大切な選択です。
自分を大切にすることは、わがままではありません
特に長年、家族や周囲の人を優先してきた方の中には、
「自分さえ我慢すれば丸く収まる」
と考える方もいらっしゃるかもしれません。
でも、いつも自分の気持ちを後回しにしていると、心が疲れてしまうことがあります。
自分の気持ちを大切にすることは、決してわがままではありません。
相手を思いやることと、自分を大切にすること。
その両方があってこそ、心地よい人間関係が育っていくのではないでしょうか。
心の持ち方が変わると、見える景色も変わる
私たちは、人との関わりの中で、喜びを感じることもあれば、傷つくこともあります。
すべての人と仲良くする必要はありません。
すべての人に理解してもらう必要もありません。
そして、いつも穏やかな自分でいなければならないわけでもありません。
イライラしたときには、
「こんなことで怒ってはいけない」
と自分を責めるのではなく、
「私は今、何を大切にしたかったのだろう?」
と問いかけてみてください。
その気づきが、自分の心を理解するきっかけになるかもしれません。
人間関係を良くするために、まず大切にしたいのは、自分自身との関係です。
自分の気持ちを知り、自分をいたわり、必要なときには自分を守る。
そんな小さな積み重ねが、これからの人生をより穏やかで心地よいものにしてくれるのではないでしょうか。
相手を大切にするように、自分自身の心も大切にしていきたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
心と食のアドバイザー 万寿(マス)

