〜知らず知らずのうちに作られた心の習慣〜
前回は「潜在意識と顕在意識」についてお話ししました。
私たちは、自分で意識して考えていることだけでなく、普段は気づいていない経験や記憶、習慣などにも影響を受けながら生活しています。
今回は、その中でも私たちの考え方や行動に大きく関わっている**「思い込み」**について考えてみたいと思います。
思い込みは、いつできるのでしょう?
皆さんは、こんなふうに思ったことはありませんか?
「人に迷惑をかけてはいけない」
「我慢することが大切」
「失敗してはいけない」
「人から嫌われたくない」
「自分のことより、家族を優先しなければならない」
これらは、一見すると当たり前のことのように感じられるかもしれません。
でも、よく考えてみると、誰もが同じように考えているわけではありません。
では、こうした考え方は、どこから生まれてくるのでしょうか。
子どもの頃の経験が影響することも
私たちは生まれてから、家庭や学校、周囲の人たちとの関わりの中で、さまざまなことを学んでいきます。
例えば、子どもの頃に、
「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」
「人に迷惑をかけてはいけません」
「そんなことをしたら笑われるよ」
「もっと頑張りなさい」
と繰り返し言われて育ったとします。
すると、いつの間にか、
「私は我慢しなければならない」
「人に頼ってはいけない」
「失敗することは恥ずかしい」
という考え方が身についていくことがあります。
もちろん、親や先生は子どものためを思って伝えていたのかもしれません。
しかし、その言葉を子どもがどう受け取るかは、一人ひとり違います。
同じ言葉でも、励ましと感じる子もいれば、自分を否定されたように感じる子もいるのです。
思い込みは、自分を守るためにできることも
例えば、子どもの頃に自分の意見を言って叱られた経験が何度もあったとします。
すると、
「自分の意見を言わない方が安全だ」
と学ぶことがあります。
その考え方は、当時の自分を守るために役立っていたのかもしれません。
ところが、大人になってもその習慣が続くと、
本当は嫌なのに断れない。
自分の気持ちを伝えられない。
いつも周りの人に合わせてしまう。
ということが起こる場合があります。
つまり、昔は自分を守ってくれた考え方が、今の自分には窮屈になっていることもあるのです。
「私はこういう人間だから」は本当でしょうか?
私たちは、自分についてもさまざまな思い込みを持っています。
「私は人前で話すのが苦手」
「私は何をやっても続かない」
「私は運が悪い」
「もうこの年齢だから、新しいことはできない」
でも、本当にそうでしょうか?
以前に失敗したからといって、次も必ず失敗するとは限りません。
人前で話すことが苦手でも、経験を重ねることで少しずつ慣れていくことがあります。
年齢を重ねたからといって、新しいことを学べなくなるわけでもありません。
過去の経験が、これからの自分の可能性をすべて決めるわけではないのです。
人間関係にも思い込みが影響する
例えば、知り合いに挨拶をしたのに、返事がなかったとします。
ある人は、
「聞こえなかったのかな?」
と思うかもしれません。
別の人は、
「私、何か嫌われるようなことをしたかしら?」
と不安になるかもしれません。
また別の人は、
「なんて失礼な人なんでしょう!」
と腹を立てるかもしれません。
起きた出来事は同じです。
でも、その出来事にどんな意味をつけるかは、人によって違います。
過去の経験や、そのときの気分、相手との関係など、さまざまな要因が影響するからです。
ここで大切なのは、
「事実」と「自分の解釈」を分けて考えること。
挨拶の返事がなかったことは事実です。
でも、「嫌われている」というのは、まだ確かめられていない自分の解釈かもしれません。
この違いに気づくだけでも、心が少し楽になることがあります。
思い込みに気づくための3つの質問
では、自分の思い込みに気づくには、どうすればよいのでしょうか?
何か嫌な出来事があったとき、次の3つを自分に問いかけてみてください。
① 私は今、何を感じているのだろう?
悲しい、腹が立つ、不安、寂しい……。
まずは、自分の気持ちに気づいてみましょう。
② 私は、どうしてそう思ったのだろう?
「嫌われたくないから?」
「失敗するのが怖いから?」
「人に認めてもらいたいから?」
自分の心の中にある考え方を、少し見つめてみます。
③ 本当にそうだと決まっているのだろうか?
「ほかの考え方もあるのでは?」
「別の見方をすると、どうだろう?」
こうして問いかけることで、今まで当たり前だと思っていた考え方に、新しい選択肢が生まれることがあります。
思い込みは、少しずつ変えていける
長い年月をかけて身についた考え方を、一度に変えることは簡単ではありません。
でも、無理に変えようとしなくてもよいのです。
まずは気づくこと。
そして、自分に優しい言葉をかけてみること。
「失敗してはいけない」
と思ったら、
「失敗しても、そこから学べばいい」
「人に迷惑をかけてはいけない」
と思ったら、
「困ったときには、人に助けてもらってもいい」
「もう年だから無理」
と思ったら、
「今の私だからこそ、できることもある」
そんなふうに、少しずつ考え方を広げていくことができます。
自分を大切にすることから始めましょう
私たちは長い人生の中で、たくさんの経験をしてきました。
嬉しかったこと。
悲しかったこと。
我慢してきたこと。
一生懸命頑張ってきたこと。
その一つひとつが、今の自分の考え方に影響しているのかもしれません。
でも、これまでの人生で身につけてきた思い込みを、これからもずっと持ち続けなければならないわけではありません。
今の自分に必要な考え方を、少しずつ選び直していくこともできるのです。
自分の心を知ることは、自分を責めることではありません。
自分を理解し、自分を大切にすることです。
そして、それは周りの人を理解することにもつながっていくのではないでしょうか。
皆さんも、少しだけご自分の心に問いかけてみませんか?
「私が当たり前だと思っていることは、本当に当たり前なのかしら?」
その小さな問いかけが、これからの人生をより心地よく生きるための第一歩になるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
心と食のアドバイザー 万寿(マス)

